Center Counter Gameは15世紀の書物にも記載されているオープニングです。18世紀には黒側のディフェンスとして認識されるようになり、Scandinavian Defenseと呼ばれるようになりました。
ゲーム開始早々からクイーンを前線に出して暴れまくる戦法はビギナー好みであり、オンラインゲームでも頻繁にプレイされています。しかし、トップクラスのプレイヤーがプレイすることはありません。序盤にクイーンを前線に出すことは、チェスのセオリーに反するからです。
実際、このオープニングは、黒側のディフェンスとしてはプレイしにくいです。初手から殴り合いになり、定跡が通用しない荒れたゲームになりがちです。
- 自分が白番のときに、相手がd5を返してセンターカウンターゲームが始まることがよくある。対応を覚えておくとよい。
- 自分が黒番のときに、センターカウンターゲームはプレイしないほうがよい。もっと優れたディフェンスがある。
主なLine,Variation
1.e4 d5 2.exd5 |
Main line 2…Qxd5 3.Nc3 |
OnlineGame頻出 3…Qe5+(Qe6+) |
Main line 3…Qa5 |
||
Modern Variation 2…Nf6 3.d4 Nxd5 |
OnlineGame頻出
白番にとってはディフェンスではないため、黒番にカウンターを仕掛けられたセンターカウンターゲームとして捉えると理解しやすい。
実戦でよく目にする展開は、実際のところディフェンスではない。黒番はクイーンを繰り出して好戦的な態度を見せてくる。
白番は、クイーンの動きが何を狙っているのかを先読みしながら、一手一手をよく確かめて対処していけばよい。
なぜなら、クイーン単独でチェックメイトすることはできないからである。(チェックメイトするにはクイーンを後衛する駒が必要。)
Main line
黒番がスカンジナビアン・ディフェンスの定跡を知っている場合、クイーンをa5に移動して白ナイトをピンする。
このピンは、白ビショップd2で外すことができ、ディスカバードアタックに繋げられる。
Modern Variation
モダン・バリエーションは、クイーンサイドに進出したポーンでセンター支配する展開になる。
これらのポーンは、それぞれクイーンとビショップで後衛する形になっている。
スカンジナビアン・ディフェンスは、黒番のギャンビットになる。ポーンを犠牲にクイーンを繰り出して優位に立ちたいという思惑でd5ポーンを突く。
しかし、ビギナーがスカンジナビアン・ディフェンスを選択したところで、その後のゲーム展開が黒優勢になるとは考えにくい。
- 序盤にクイーンを進出すると次々に狙われて追われる展開になる。
- クイーンを繰り返し移動することになるため駒の展開が遅れる。
- 序盤にクイーンを繰り出したところで単独でチェックメイトできるわけではない。
結局、黒番はクイーンをウロチョロと動かすだけになり、その間に白番は駒を進出して着々と攻撃態勢を整えて、こうなると形成は白番が有利になる。
黒番がスカンジナビアン・ディフェンスを使いこなすのには、相当な慣れと読みが要求される。ビギナーに勧められるディフェンスではない。
e4に対するディフェンスには、多くのプレイヤーが勝ちを信じて選択しているシシリアン・ディフェンスを勧める。
スカンジナビアンの狙い
実戦で、スカンジナビアン・ディフェンスの定跡どおりにゲーム展開することはほとんどない。
とくにビギナーは、クイーンをウロチョロと動かしながら、定番の作戦を実行できる機会(チャンス)を狙っている。
クイーンをウロチョロさせる黒番には、次の狙いがあると考えられる。
- 心理的優位性を得たい
- 相手のミスでタダ取りしたい
- キャスリングを待ちたい
心理的優位性を得たい
ビギナーがスカンジナビアン・ディフェンスを選択する動機は、「とりあえず先にチェックを仕掛けておきたい」という安易なものであることが多い。
実際に、このゲーム展開をレート戦で何度も経験した。どういうわけか、スカンジナビアン・ディフェンスばかりを好むビギナーがいて、皆、早々にチェックしてくる。
しかし、黒番のクイーンがe5でチェックを仕掛けても、白番は簡単に防げるし、その後に白ナイトで追撃すれば黒クイーンはただウロチョロと追い回されることになる。
つまり、この早々のチェックは、ただの虚仮威しにしかなっていない。相手がビギナーなら心理的優位性を得られるかもしれないが、分析では明らかな奇手(?!)であり手損にしかなっていない。
相手のミスでタダ取りしたい
センターカウンターゲームでクイーンにウロチョロされると、正直うざい。
クイーンが狙っているのは、相手のミスである。白番が駒を展開していくなかで、うっかりタダ取りできる駒が出てくるのを待っている。
クイーンにウロチョロされても動じることなく、展開した駒がどの駒に守られている状態なのかを常に意識しておくことで、タダ取りされることを防げる。
キャスリングを待ちたい
センターカウンターゲームになった場合は、黒クイーンの狙いを先読みしながら、安易なチェックをされないように一手一手、慎重に対処をしていけばよい。
カウンターへの応酬
定跡から外れて黒番がクイーンをウロチョロさせているのには、実にシロウトくさい作戦がある。
b2とg2(白ナイトの前のマス)は、初期配置のビショップだけが守っている弱点と言える。ビショップが移動すればb2とg2は守りが無くなることは、ビギナーにもよく知られている。
黒クイーンは、だいたい上図の位置からこのマスを狙っている。
クイーンはb2とg2を狙っている
ビギナーが黒クイーンを動かしながら狙っているのは、b2とg2(白ナイトの前のマス)である。このマスが弱いことはビギナーにもよく知られている。
上図の黒クイーンの動きを見ると、白の陣地に度々侵入して躍動しているように見えるかもしれない。
しかし、その間に白番は駒を展開して陣形を整え、かなり優勢を築いている。この時点で、Chess.comの分析でも白+6.6となっている。
次手で黒e5ならアンパッサン
2手目に黒番がポーンe5を突いてきたら、迷わずアンパッサンテイクするのがよい。
もし、ポーンe5を取らなければ、黒番はポーンf6を上げてポーンチェーンを作って守りを固めてしまう。
カウンターに応じない選択
センターカウンターゲームの白番のメインラインは、白ポーンが黒ポーンを取る手順であるが、ポーンをスルーさせる選択もある。
つまり、センターカウンターゲームに応じないということ。
黒番の多くのプレイヤーは、ポーンを取られてクイーンで取り返す流れを想定している。そこで、ポーンをスルーされるのは想定外であり、レート戦でも手が止まるプレイヤーは実際に多かった。
ポーンをスルーさせる選択の利点は、e5に前進した白ポーンを除去するにはf7黒ポーンをf6に突かなければならないところにある。「死のマス」とも呼ばれるf7を開けさせることができれば、白番にとってアドバンテージになる。
e5からポーンチェーンは有効
d5の黒ポーンを取らずに、e4白ポーンをe5に前進させる選択もある。
次手でd4にポーンを前進して護衛すると強固になる。
このあと、もし黒番がfポーンを突いてきたら、取っても良いし、取ってくるのを待ってもよい。
互いにポーンスルーはややこしい
白がポーンを前進したときに、黒もポーンを前進させる選択がある。
この場合、ナイトf3でポーンを護衛することになるが、あまり守りを意識する必要はない。黒番がf7ポーンを突いて「死のマス」が開くのを待てばよい。
トラップ
センターカウンターゲームが選択されたときに、白番には黒番をハメるトラップ(罠)がある。
イルンダイン・トラップ
ディスカバード・トラップ
クイーンを仕留めるトラップ
定跡どおりにa5に寄った黒クイーンに対して、白番にはナイトでフォークを狙うトラップがある。
手順が上図の順どおりに進まなくても、d5にナイトを移動してb5のビショップの守りを外すことでトラップを仕掛ける。
このビショップを黒番がタダ取りすると、ナイトでフォークをかけることができる。
クイーンの行き場を無くす罠
黒番はクイーンを繰り出して、果敢に攻めている気分になっているかもしれない。
しかし、白番はクイーンを仕留めるためにどんどん駒を展開してくるし、黒クイーンはだんだん可動域が狭くなってくる。上図のように挙句に取られることすらある。
ここで注目したいのは、白黒それぞれの陣形である。白番は、クイーンを攻撃しながらナイトやビショップを順調に進出しているのに対して、黒番はほとんどの駒を進出できていない。
実はこの時点で、ゲームの評価値は「白が優勢」になっていることを知ると、クイーンをウロチョロさせることが有効ではないことがわかる。
- 黒クイーンの逃げ場はどんどん少なくなり、取られることもある。
- 白番が陣形を整えていくため、黒番は気付けば不利な戦況になる。