ダンバーズ・オープニングは、チェスのビギナー同士の対戦で頻繁に遭遇するオープニング(?)である。
受け方を知らないと、たった4手でチェックメイトされてしまう。逆に言うと、たった4手でチェックメイトできるため、ダンバーズ・オープニングを指すビギナーはとても多く、レート戦でもしつこいほど遭遇する。
一応、「オープニング」と名前は付いているものの、チェスの正統的なオープニングとは扱われていない。はっきり言ってしまえば邪道。ビギナーの安易なチェスごっこにはぴったりだろう。
このダサいオープニングは、受け方がわかれば簡単に駆逐できる。
ダンバーズ・オープニングとは
ダンバーズ・オープニングは、ゲーム開始直後にクイーンを振りかざす大胆不敵に見えるオープニング(?)である。
チェスの正統的なオープニングとして扱われない。プレイヤーの独断による手筋のひとつに過ぎない。
チェスのセオリーをまったく無視している荒っぽい手筋を揶揄して、Wayward Queen Attack(気まぐれ女王アタック)とも呼ばれる。
ただ、マスタークラスのチェスプレイヤーBernard Parhamは、ダンバーズ・オープニングの可能性を探求していることでも知られており、彼にちなんでParham Attackと呼ぶ人もいる。
ちなみに、チェスエンジンの解析では、ダンバーズ・オープニングを仕掛けた瞬間に劣勢と判定される。
ダンバーズの狙い
- たった4手でチェックメイト
- ポーンとルークをタダ取り
ダンバーズ・オープニングの手筋には単純なチェックメイトが潜んでいる。
その手筋は、チェスを始めたばかりの人には見えづらい。誰もが1度は引っかかった経験があるだろう。
たった4手でチェックメイト
チェスを始めたばかりのころに1度は味わう、まったくつまらないチェックメイトがこのチェックメイトかもしれない。
たった4手でチェックメイトに至る。
でもビギナーにとっては、このつまらないチェックメイトのおかげで、チェスの詰みを学ぶ機会になっているのかもしれない。
「二度とこんなつまらない負け方をしたくない。」と思うなら、相手が企んでいる詰み筋を先に潰す洞察力が養われていくはずである。
ダンバーズ・オープニングの洗礼を浴びて、チェスには数手先を読む力が必要なことに気付く。
ポーンとルークをタダ取り
ダンバーズ・オープニングには、ルークをタダ取りする手筋がある。
クイーンを追い返そうとして安直にナイト前のポーンを突いてしまうと、ポーンを取られ、ルークを取られ、敵クイーンにやりたい放題やられてしまう。
絶対にやってはいけないのがナイト前のポーンでキングを追い払おうとすることである。
ダンバーズの受け方
ダンバーズ・オープニングはトラップではない。
落ち着いて考えていけば、気まぐれクイーンを黙らせることができる。
OpenGame(e4e5)での受け方
白e4に対して反射的にe5を指すクセが付いている人は多く、実戦でもレートが低いうちはほとんどがe5である。
この場合のダンバーズ・オープニングの受け方は、次のようになる。
- ポーンのタダ取りを防ぐ。
- クイーンを追い払う。
黒クイーンは角度を変えながら、しつこくチェックメイトを狙ってくる。
Sicilian(e4c5)での受け方
白e4に対する黒番のディフェンスはc5(Sicilian)が最も多く指されている。
この場合のダンバーズ・オープニングの受け方は、次のようになる。
- ポーンのタダ取りを防ぐ。
- チェックメイトの筋をふさぐ。
ダンバーズがダメな理由
- 経験者にはまったく通用しない。
- ゲーム開始早々にクイーンが捕殺されるリスクがある。
- クイーンを動かし続けるため駒展開できない。
チェスというゲームは、ダンバーズ・オープニングで早々に決着するような安直なゲームではない。
ビギナーにしか通用しないダンバーズ・オープニングを繰り返し使っているプレイヤーは、オープニングの定跡を学ぶことを怠っている者である。自分の無知をさらす恥ずかしいプレイであることに早めに気づいて、正統的なオープニングを学ぶことを勧めたい。
捕殺されるリスクがある
クイーンは狙われ続ける。移動箇所を間違うと、あっさり捕殺される。
駒展開が遅れて不利になる
陣形を整えるのが遅れる。ダンバーズ側はクイーンを動かし続けるが、受け手はポーンやナイトを展開して陣形を整えて優勢になる。
ヒカル・ナカムラのダンバーズオープニング
チェス界の奇才でアウトロー、ヒカル・ナカムラは公式戦で敢えてダンバーズ・オープニングを仕掛けたことがある。
もちろん、舐めプである。
初心者が好んで指すダンバーズ・オープニングを仕掛けて、相手を挑発した。
実際、チェスでは頭に血がのぼると、冷静さを欠いてミスをすることがある。私は、アプリでのゲーム中にチャットで挑発されて、正確に判断できなくなった経験がある。それに、そもそもダンバーズ・オープニングを仕掛けられると「舐められてる」気がしてイラっとしてしまう。