ダンバーズ・オープニングの受け方【横暴クイーンの騙し討ちを回避する方法】

定跡

ダンバーズ・オープニングは、オンラインゲームで頻繁に遭遇する騙し討ちのような手筋です。受け方を知らないと、あっという間にルークを取られたり、早々にチェックメイトされてしまうことさえあります。

ビギナー(低レートのプレイヤー)にはダンバーズ・オープニングを指す人がとても多いため、オンラインゲームを始めるならダンバーズ・オープニングへの対策は必ず覚えておきたいところです。

「ダンバーズ・オープニング」とは言うものの、チェスの正統的なオープニングとは扱われません。セオリーを無視した荒っぽい手筋を揶揄やゆして「Wayward Queen Attackウェイワード クイーン アタック(横暴な女王のアタック)」と呼ばれます。

チェスエンジンの解析では、ダンバーズ・オープニングを仕掛けた側が劣勢と判定されます。ダンバーズ・オープニングを自分自身が指すことはまったくおすすめできません。チェス上達の妨げになるでしょう。

ダンバーズ・オープニングは、相手が指してきたときのために覚える必要があるということです。

ダンバーズの目的は騙し討ち

  • ルークをタダ取りしたい
  • 早々にチェックメイトしたい

ダンバーズ・オープニングを仕掛けてくるプレイヤーの目的は、上の2つの騙し討ちを企んでいます。

仕掛ける側(白側)の目線に立ってみると、このオープニングの目的を理解しやすいです。

ルークをタダ取りしたい

ダンバーズ・オープニングには「ルークをタダ取りしたい」という目的があります。

いきなり飛び出してきた白クイーンを追い払おうとあわてて安直に対処してしまうと、ポーンをタダ取りされ、ルークをタダ取りされ、やりたい放題やられてしまいます。

黒側が絶対にやってはいけないのは、ナイト前のポーンを突いて(2…g6)白クイーンを追い払おうとすることです。

早々にチェックメイトしたい

チェスを始めたばかりのころに一度は食らう、浅はかでつまらないチェックメイトがこれです。

ダンバーズ・オープニングを経て、たった4手で早々にチェックメイトされてしまいます。

オンラインゲームでも低レートのうちは、このチェックメイトの手筋が何度も繰り返されます。ビギナーにとっては、この浅はかなチェックメイトがチェスの詰みを学ぶ機会になっています。

「二度とこんなつまらない負け方をしたくない。」と思うなら、相手の企みを先読みする洞察力どうさつりょくをつけていく動機にもなるでしょう。

ダンバーズの受け方

ダンバーズ・オープニングを仕掛けられて、次々と駒を取られてしまった経験があるかもしれません。

しかし、ダンバーズ・オープニングはトラップではないので、落ち着いて対処していけば横暴クイーンの攻撃を防ぎながら陣形を整えていくことができます。

OpenGame(e4e5)での受け方

ビギナーのうちは相手白e4に対してe5を指す展開(OpenGame)が多く、オンラインゲームでもレートが低いうちはほとんどがe5だと思います。

この場合のダンバーズ・オープニングの受け方は、次のようになります。

  1. ポーンのタダ取りを防ぐ。
  2. クイーンを追い払う。

白クイーンはしつこくチェックメイトを狙ってきますが、落ち着いて対処すれば追い払うことができます。

Sicilian(e4c5)での受け方

白e4に対する黒側のディフェンスで最も多く指されている展開はc5(Sicilian)です。

この場合のダンバーズ・オープニングの受け方は、次のようになります。

  1. ポーンのタダ取りを防ぐ。
  2. チェックメイトの筋をふさぐ。

ダンバーズがダメな理由

  • 経験者にはまったく通用しない。
  • クイーンが捕殺されるリスクがある。
  • クイーンばかりを動かすため布陣が進まない。

チェスというゲームは、ダンバーズ・オープニングのような安直な作戦で決着するようなゲームではありません。経験者には全く通用しません。

ゲーム開始早々にクイーンを前線に出しても、相手のポーンやナイト、ビショップによって常に狙われる状況になります。うっかり移動を間違うと捕殺されるリスクが付きまといます。

ダンバーズを仕掛けた側は、常に攻撃されるクイーンを動かし続ける羽目にはり、布陣が遅れて劣勢になっていきます。対してダンバーズの受け手側は、ポーンやナイト、ビショップを着々と展開して陣形が整うため優勢になります。

クイーンを前線に出すのは、ボード上の駒がある程度少なくなって、クイーンの直線的で大胆な動きを活かせる中盤以降が望ましいです。

プロ公式戦でのダンバーズオープニング

マスタープレイヤーのヒカル・ナカムラは、公式戦でえてダンバーズ・オープニングを仕掛けたことがあります。

もちろん舐めプです。2005年に行われた試合5戦中3戦の先手白番のときに、ビギナー好みのダンバーズでプレイしました。

もちろん、プロ同士のゲームでダンバーズの狙いが功を奏することなどありません。ヒカル・ナカムラも5戦1勝2敗2分けと苦戦しました。

マスタークラスのチェスプレイヤーBernard Parhamバーナード パーハムはダンバーズ・オープニングを熱心に研究していることで知られており、彼にちなんで「Parham Attackパーハム アタック」と呼ぶ人もいます。

実践でのダンバーズオープニング

ダンバーズの受け方を間違って負けたゲーム

ダンバーズ vs Sicilian Defence