エンドゲームには、勝利のために知っておかなければならない知識がある。
エンドゲームでは、王が自ら兵士(ポーン)を率いて敵陣に進攻する。「敵陣はこっちだ!さあ付いてこい!」
その様は、最後の力を振り絞って戦い抜こうとする戦士そのものを想像させてくれる。
エンドゲームの美学に触れていきたい。
エンドゲームとは
エンドゲームとはチェスの終盤のことを言うが、エンドゲームを明確に定義するものはない。ゲーム中にどの段階からエンドゲームに入ったのかは、はっきりと分かるものではない。
強いて言えば、「勝つためには、ポーンを昇格(Promotion)させる必要がある。」と意識した段階がエンドゲームの始まりかもしれない。
この段階の盤面には、キングとポーンのほかにもう一つ、駒を持っていることが多い。お互いがルーク、ビショップ、ナイトのいずれかを持ちつつ、ポーンの昇格を競い始めることになる。
チェックメイトに必要な駒の組み合わせ
- キングとクイーン
- キングとルーク1個
- キングとビショップ2個
- キングとビショップとナイト
チェックメイトには、最低でもこれらの駒の組み合わせが必要になる。つまり、手持ちの駒だけではチェックメイトすることが難しい状態になっていて、だからポーンを昇格させる必要性を意識するわけである。
エンドゲームの最終局面
盤面にキングとポーンだけが残っている状態は最終局面である。ぶつかり合ったポーン、一歩も動いていないポーンなどが残っている。
最終局面では、これらのポーンを昇格させるための競争が始まる。これはポーンのレースでもあるし、プレイヤーの計算力の競い合いでもある。
キング同士がタイミングを見ながらポジションを争い、マスと手数を正確に数えながらポーンを進める作業は、機械的なものになる。
エンドゲームの展開
エンドゲームでは、生き残ったポーンをキングが引き連れて敵陣に突進していく展開になる。
基本的には、キングが先行してポーンを守りながら昇格(Promotion)を目指して進む。この様子は、あたかも王が兵士に「こっちだ、付いてこい!」と先導しているかのようである。
このとき、キングの持つエリアを意識する。白キングと黒キングは、互いのエリアに侵入できないことを理解したうえで、ポジション取りをする必要がある。
ポジション取りに成功したキングの側面を、ポーンは通過しながら前進する。
やがて、ポーンはバックランクに到達して昇格する。
あとは、キングとクイーンで敵将を追い詰め、チェックメイトすればよい。
- ポーンを前進させるときは、キングの横のマスを通過させる。
- キングがポーンより先に進み、ポーンを通すラインを確保する。
- そのために、キング同士のポジション争いを制する必要がある。
ポーン昇格の判断
エンドゲームでポーンを昇格させることができるかどうか。
昇格させたいポーンが、その昇格を阻止したい相手キングとの競争に勝てるかどうかは、バックランクまで斜めに引いた線(平方根)がつくる正方形で判断できる。
次の手番が自分の状態で、正方形の外に相手キングがいれば、ポーンを昇格させることができる。
相手キングが正方形の中にいると捕まる
次の手番が自分の状態で、正方形の中に相手キングがいる場合は、単純な競争ではポーンを昇格させることができない。つまり、相手キングに捕まってしまう。
そのため、昇格させたいポーンを味方の駒で守りながら、ポーン昇格を目指すことになる。
オポジションの知識
オポジション(Opposition)とは、キング同士が「見合った」状態のことをいう。オポジションは、ポーン昇格の重要な条件なので必ず覚えておきたい。
オポジションの基本は、自分の手番のときに相手キングの正面(同じファイル)にポジションを取ることを言う。
別の言い方をすると、相手キングがいるマスの色と同色のマスに飛び込めばよい。
相手キングと2マス分離れている状態で、次の手番が自分のときは、相手キングに正対するマスにキングを進める。
- オポジションを取るときは、相手キングがいるマスの色と同じ色のマスに進む。
- 前進できるチャンスができたら、キングを前進させる。
6ランクのオポジション
6ランクでオポジションを取れば、ポーンを昇格できる。
6ランクのキングは自分の手番のときに、必ず、オポジションを取らなければならない。
もしオポジションを取れないと、ポーンを昇格できなくなる。
6ランクで相手にオポジションを取られるとドロー
相手の手番で、自分のキングの正面にポジションを取られると、ステイルメイトを選ぶことになる。
オポジションを取り直したいところだが、そのためにはキングがポーンから一度離れることになってしまう。しかし、その瞬間にポーンが取られてドローになってしまう。
キースクエアの知識
キースクエア(KeySquare)とは、昇格させるポーンの2マス前方にある横3列のマスのこと。
キースクエアにキングを入れることができれば、確実にポーンを昇格させることができる。
「早くポーンを昇格させたい」という気持ちから、ポーンを先に進めたくなるかもしれないが、考え方は逆である。可能な限りキングを先に進めてキースクエアに入れることが優先される。
2マスはオポジションの調整
キースクエアにキングを入れたあとも、オポジションを取ることが必須となる。
キースクエアに入れたタイミングでオポジションを取れなかった場合は、ポーンを動かして一手分タイミングをずらせばよい。
つまり、2マス分の余裕のおかげで、必ず次の手番でオポジションを取れるわけである。
キースクエアに入れない場合
ポーンが相手キングに近づきすぎていてキースクエアに入れない状況では、まずポーンを守ることを最優先する。キングとポーンが接している限り、黒はポーンを取ることはできない。
実戦でのエンドゲーム
この局面では、どちらも先にポーンを動かしたくない。ポーンを先に動かした側が、ポーンを取られてしまう状態だからである。
34手目の白番で下がったときが動くチャンスだった。しかし、黒番はよく考えずにキングを動かしてチャンスを逃してしまった。
この場面では、相手にポーンを取らせてでも前進する方法を考える。
ポーンは動かさずにキングだけを動かしながら、チャンスが来るのを探るのが最善策。