イタリアンゲームは、白番にとって目的がわかりやすく、また最速でキャスリングできるため、よく選択されるオープニングの一つである。
もし自分が黒番で、白 e4 に黒 e5 と返した場合はイタリアンゲームになる可能性が高い。そのため、イタリアンゲームの知識は必須と言える。
ビギナーがまず覚えたいオープニングであり、中級者であっても奥深く研究する余地がある、まさにチェスを象徴するオープニングと言える。
イタリアンゲームとは
イタリアンゲームの歴史は古く、15世紀にはすでに書物に記載され、16世紀にも多くのプレイヤーに研究されている。
17世紀にイタリアのチェスプレイヤー、ジョアキーノ=グレコによってメインラインが確立された。以来、現在まで300年以上に亘って分析が続けられてきた伝統的なオープニングである。
白番にとって目的を理解しやすく、またキャスリングまでの手順が最短であるため、ビギナーに教えるオープニングとしても適している。
それゆえに、イタリアンゲームはビギナー同士のチェスにおいて頻繁に選択されるため、黒番にとっても応酬を知らなければ苦戦を強いられることになる。
イタリアンゲームの狙い
イタリアンゲームのわかりやすい狙い(目的)として、黒の弱点である f7 への攻撃がある。(ちなみに白の弱点は対象的に f3 である。)
白ナイトが g5 に前進すると、黒番は序盤から苦しい戦いを強いられる。
白番はナイトでf7を狙う
ナイトを g5 に前進させるための条件
- 黒クイーンの攻撃ラインが塞がれていること
- 白ビショップ(左側)で g5 を護衛していること
黒番はポーンh6でけん制
白ナイトが g5 に前進してこないように、イタリアンゲームの形になった時点で、黒番はhポーンを突いてけん制するとよい。
これでイタリアンゲームにひそむ危険をひとまずは回避できる。
イタリアンゲームの黒番応酬手
ビショップでの応酬
Giuoco Pianoはイタリアンゲームに対する黒番の応酬手の一つ。イタリア語で「静かなゲーム」を意味する。
黒がビショップを c5 に展開したことでdファイルのポーン進撃は見合わせとなり、盤面がいったん落ち着く。
ナイトでの応酬
Two Knights Defenseは、イタリアンゲームに対する黒番のディフェンス。
黒番がナイトを f6 に展開した場合、g5 に対する黒クイーンのラインを塞いでしまうため、白ナイトの前進を許してしまう。
もし白ナイトが g5 に前進した場合は、ポーンを d5 に上げて白ビショップの攻撃ラインを塞ぐしかない。ただし、d5 を突くことによってセンターで駒の取り合いになるため、好戦的な選択と言える。
この後のプレイでもっともやってはいけないことは、黒クイーンを d6 に置くことである。白ナイトが f7 に入り込むと、黒はキングとクイーンとルークをフォークされてしまう。
イタリアンゲームのトラップ
イタリアンゲームには知っておかなければならないトラップがある。
もっとも有名なのがリーガル・トラップである。
リーガル・トラップ
イタリアンゲームにはレガル・トラップ(Légal Trap)がある。
黒ビショップが白ナイトをピンするとトラップのきっかけになる。白番はナイトをわざと前進させて、自らクイーンを黒ビショップの攻撃の前に晒す。当然、黒番はクイーンを取りたくなる。
自然なムーブでありながら、ナイトでのチェックメイトゆえになかなか詰み筋が見えにくい。
もし自分が黒番のときは、このトラップを知らなければ、ついクイーンに手を出しがちであり、まんまとトラップにかかってしまうだろう。
ブラックバーン・シリング・トラップ
Blackburne Shilling Trap
英国のチェスプレイヤー、ブラックバーンが客相手に勝利の1シリングを稼ぐために用いたトラップと言われている。
しかし、ブラックバーンがこのトラップでプレイした記録は存在しない。
イタリアンゲームは初心者に最適
- 定石を覚えやすい。
- ギャンビットになりにくい。
- 目的がわかりやすい。
- 黒の弱点を突ければゲーム開始早々に有利になる。
イタリアンゲームは、チェスの初心者にも最適なオープニングである。
初心者同士のゲームでは、e4 に対して e5 が返されることが多いため、白番としてはイタリアンゲームに持って行きやすい。
イタリアンゲームの基本形までの定石は手数が少なく、展開したナイトやビショップは、敵駒の攻撃ライン上にないマスに配置されるため安全である。
- 黒の弱点 h7 を狙える。
- 最短でキャスリングできる。
ナイトを g5 に前進できれば、黒の弱点h7に入り込んでフォークし、ゲーム開始早々に黒ルークを取って有利に立つことができる。