The pawn are the soul of chess.
「ポーンはチェスの魂である。」とは、18世紀の作曲家でチェスの分析に長けたプレイヤーでもあった、フィリドールの言葉。
チェスの駒ポーンは、いわゆる「歩兵」にあたる駒である。だからと言って、戦場の前線で捨て駒のように扱われる歩兵とばかりに思うなら、それは浅はかである。
なぜなら、ゲームの展開はポーンの布陣によって決まるからである。チェスというゲームのストーリー性は、ポーンの独特な動きによってつくられている。
ゲームが始まると、まず最初に動かし、そして最後まで活躍するポーンの動きについて解説する。
ポーンの動き方
- 原則的には1マスずつ直進移動する。ただし、他の駒がある場合は移動できない。また、後退はできない。
- 初期位置から2マス直進することもできる。
- 斜め前の敵駒を取って、そのマスに進むことができる。
ポーンは、原則的には1マスずつ(一歩ずつ)直進する。
前方のマスが空いていれば進めるが、前方のマスに他の駒があると進めない。
また、後退(後ろに下がること)はできない。
初期位置のポーンは2マス進めることもできる。初期位置からは1マス進めてもよいし、2マス進めてもよいということになる。
斜め前の敵駒を取って進むこともできる
ポーンは、斜め前のマスに敵駒がある場合に、敵駒を取ってそのマスに進むことができる。
もちろん、敵駒を無視して前進してもよい。
つまり、ポーンの斜め前に敵駒がある場合は、敵駒を取るか、スルー(通過)するかを選択できる。
相手が、取ってもらうことを期待してポーンをぶつけてくることがある。ポーンをぶつけてきた相手の狙いは何なのかを考察して、敵駒を取るか、スルーか、どちらが有利かを慎重に判断すべきである。
アンパッサン
アンパッサンとは、敵のポーンが初期位置から2マス進んで自分のポーンの横に並んだときは、次の手番に限ってその敵のポーンを取ることができるというもの。
初期位置のポーンが2マス前進できるとしても、アンパッサンにおいては、1マスずつ前進するというポーンの原則に則っている。
上図を動かしてアンパッサンの動きを見てもらえるとわかるが、あたかも敵のポーンが1マス進んだところを取っているような動きになる。
プロモーション(昇格)
敵陣の最終ラインに着いたポーンは、クイーン、ルーク、ビショップ、ナイトのいづれかに変身する。
これを「ポーンの昇格」という。なお、チェスでは最終ラインのことを「バックランク」と言う。
つまり、相手側のバックランクに到達したポーンは昇格できるということ。
ゲーム終盤では、生き残ったポーンを両者がそれぞれに前進させ合い、どちらが先にポーンを昇格できるかを競う展開になる。
ポーンの昇格は、ほとんどの場合においてクイーンが選ばれる。
ゲームの終盤では、両者がすでにクイーンを失っていることも多い。先にポーンを昇格できた方が勝機を得ることになる。
ポーンの役割
King | Queen | Rook | Bishop | Knight | Pawn |
∞ | 9 | 5 | 3 | 3 | 1 |
センターコントロールの主軸
自陣でキングを護衛する
連隊を組んで前線で戦う
ポーンの使い方
初期展開(Pawn Center)
防御(Pawn Chain)
上図は、センター・カウンター・ゲームでポーンをスルーさせた流れでできたポーンチェーンである。とくに白番の斜めに連なるポーンチェーンを見るとわかりやすいはず。対する黒番もポーンチェーンができている。
ポーンは、斜め前の駒を取ることができる特性から、ポーン同士で守ろうとすると斜め後ろから後衛することになる。
ポーンチェーンでは、もし前衛のポーンが取られても、後衛のポーンが順繰りで取り返せるようになっている。
このようなポーンチェーンを壊すためには、どれかの駒を犠牲にする必要が出てくる。ポーンチェーンのポーンを取ると、斜め後ろのポーンが取り返せる構造になっているからである。