ルイ・ロペスのオープニングの名前は、16世紀スペインのカトリック司祭Ruy Lópezにちなんで付けられた。そのため、Spanish Gameとも呼ばれる。初出は1490年と古いが、現在でも白e4黒e5のオープニングのなかで人気が高い。
ルイ・ロペスは、ゲーム開始早々にビショップを繰り出す好戦的なオープニングである。しかしなぜ、いきなりビショップをb5に配置するのか。
ルイ・ロペスの元来の目的は黒のポーン構造を崩すことにある。白ビショップと黒ナイトを交換して、そのあとクイーン交換へと続く急戦型であり、この展開が得意ならルイ・ロペスは合っている。
ルイ・ロペスの狙い
ルイ・ロペスの狙いは、黒のポーン構造を崩す(ダブルポーンにさせる)ことにある。
- 白ビショップが黒ナイトを取る。
- 黒がポーンで白ビショップを取り返すと、黒はダブルポーンになってしまう。
チェスエンジンStockfishでの分析では、白ビショップが黒ナイトを取る方が白番にとって有利になる結果が出ている。(ただし、この結果では黒が白ビショップをポーンで取り返さないイレギュラーな展開となっている。)
しかし、主流なのは、黒ナイトを取らない展開である。
- モーフィー・ディフェンスから白ビショップがa4に下がる。
- 白ビショップは黒キングサイドへの攻撃ラインを維持する。
チェスの棋譜データベースでも、ナイトを取らないゲーム展開が圧倒的に多い。
元来はナイトを取る展開
ルイ・ロペスにおいて、白ビショップと黒ナイトを交換する展開はExchange Variationと呼ばれる。さらに、クイーンを交換する展開へ続く。
ナイトを取る選択をするかどうかは、次の点で判断する。
- ビショップを1つ失う代わりにナイト2つで戦っていく。(黒番はナイトを1つ失う。)
- 黒のポーン構造が崩れた状態をゲームで活用できる。
- クイーン交換する展開になると、キャスリングの権利を失う。
ナイトで戦うのが得意、クイーン交換をして戦うのが得意なら、ルイ・ロペスが合っている。
なお、黒番が白ビショップを取る場合は、ほぼ常にdファイルのポーンで取ってクイーンが参戦できる態勢をつくる。ダブルポーンになるが、ビショップ2つで戦っていくことができる。
e5ポーンを取るとクイーン交換
白番は、黒ナイトを取ればe5ポーンを取ることができると考えるかもしれない。
しかし、e5ポーンを取るとクイーン交換を要求する展開になる。
クイーン交換に応じない場合は、白番はキングを移動させることになり、同時にキャスリングの権利を失ってしまう。
このケースでは、白はビショップとナイトの2つを失っている。黒はナイト1つのみを失っている。
この時点で白がピース損をしているため、黒が有利になる。
現在はナイトを取らない
現在のルイ・ロペスのゲーム展開は、モーフィーディフェンスに応じて黒ナイトを取らずに白ビショップがa4に下がる展開が圧倒的に多い。
ナイトを取らない選択するかどうかは、次の点で判断する。
- 白ビショップが黒キングサイドに維持する攻撃ラインを活用できる。
また、ルイ・ロペスには、ナイトを取らないバリエーションが多数存在している。
ルイ・ロペスのディフェンスバリエーション
- モーフィー・ディフェンス:3…a6
- ベルリン・ディフェンス:3…Nf6
モーフィー・ディフェンス
ルイ・ロペスに対する黒番のディフェンスで最も選ばれているのがモーフィー・ディフェンスである。
飛び出してきた白ビショップを追い払うかたちの定跡となっており、早めに脅威を取り除いておきたいという心理が見える。
白ビショップがa4に下がれば、ただちに攻撃する意思は無いものと見ることができる。
ベルリン・ディフェンス
モーフィー・ディフェンスのバリエーション
モーフィー・ディフェンスで白ビショップがa4に下がった場合によく選択されているバリエーションは次のとおりである。
- クローズド・ディフェンス:4…Nf6 5.O-O
- シュタイニッツ・ディフェンス:4…d6
- ノルウェー・ディフェンス:4…b5
クローズド・ディフェンス
クローズド・ディフェンスは、ルイ・ロペスに対するもっとも手堅いディフェンスと言える。
モダン・シュタイニッツ・ディフェンス
モダン・シュタイニッツ・ディフェンスは、ポーンd6としてe5ポーンを守る形を取る。
このとき、黒ナイトがピンされた状態になることに注意しなければならない。黒番は次手で必ず黒ビショップをd7に配置してディスカバードアタックに備える。
ノルウェー・ディフェンス
ノルウェー・ディフェンス(Norwegian Defense)は、白ビショップを追いかける展開を取る。
白ビショップの脅威を取り除けるが、その代わりキャスリングしづらい状態になる。b3に移動したビショップの攻撃ラインが間接的に当たることに留意したい。