チェスの神はシシリアンを選んだ【ナイドルフ・ドラゴンほか頻出する定跡を解説】

定跡

世界的なチェス専門誌「Chess Informant」の棋譜データベースでは、ゲームの25%(4回に1回)がシシリアン・ディフェンスとなっている。

これはチェスプレイヤーの多くが、白e4に対するディフェンスは黒c5と指すシシリアン・ディフェンスが最適解であると認識しているあかしと見てよい。

シシリアン・ディフェンスは、チェスの数百年にわたる分析から導き出された白e4に対する最良のオープニングであり、チェスの神はシシリアンを選んだと言っても過言ではないだろう。

シシリアン・ディフェンスとは

シシリアン・ディフェンスは、ディフェンスの名のとおり黒番の定跡であり、白e4に対して黒c5の展開が基本形である。

シシリアン・ディフェンスの目的は、白にセンターポーン2つ(e4,d4)を並べさせないことにある。だから、白がポーンd4を突いてきたら、黒はポーン(c5)でそれを取る一手となる。

この展開によって盤面が開いた形(Open)になる。一般的に、単に「シシリアン」と称する場合は、この「オープン・シシリアン」のことを言う。

オープン・シシリアンは、実戦でも多く遭遇する展開である。

シシリアン(オープン)

オープン・シシリアンは、3手目で白がポーンd4と突いてくる。

黒は、そのポーンを取るのが定石となっている。d4のポーンを取らなければならない。

その後、黒白ともにナイトを進出し、黒の5手目でバリエーションに分かれる。

黒5手目 バリエーション
a6 ナイドルフ
g6 ドラゴン
Nc6 クラシカル
e6 シェヴェニンゲン

ナイドルフ・バリエーション

シシリアン・ディフェンスで最も選ばれる定跡がナイドルフ・バリエーションである。

ポーンa6と突いたのには、白ナイトの進出をけん制する目的がある。

ドラゴン・バリエーション

クラシカル・バリエーション

スヘイフニゲン・バリエーション

クローズド・シシリアン

クローズド・シシリアンは、白がポーンの交換を避けて駒展開する形をいう。盤面が閉じた形(Closed)になるため、クローズド・シシリアンと呼ばれる。

白はビショップを展開するためにフィアンケットを組むことになる。そのため、黒は対角線上にあるルーク(a8)

アンチ・シシリアン

白番がシシリアンの知識を持っていない場合は、アンチ・シシリアンの展開になる。

実戦で多く遭遇するのはアンチ・シシリアンであるため、その流れを知っておくとよい。

横暴クイーン(白Qxd4)

シシリアンにも横暴クイーンが頻出する。

ナポレオンへの展開(白Qf3)

ナポレオン(オープニング)を好むプレイヤーは多く、シシリアンにもナポレオンは頻出する。

ナポレオンには、黒番にフォークの手筋があることを知っておくとよい。白ビショップ(c4)が攻撃の支点になっているので、黒ナイトを犠牲にしてでも排除した方がよい。

白の攻撃が連続するため、黒はなかなか手が進まないが陣形は悪くない。

ボウドラー アタック(白Bc4)

Bowdler Attackは白がビショップを Bc4 と展開する。

モスクワ・バリエーション(白Bb5)

ロッソリモ・バリエーション(白Bb5)

シシリアンへの白の応酬手

アラピン・バリエーション

スミスモラ・ギャンビット

なぜ多くのプレイヤーがシシリアンを選ぶのか

センターポーンの交換による複雑性を回避したい

 

先手白番がe4で先にセンターを陣取ると、後手黒番はどうしてもセンター支配に後れを取ってしまう。チェスでは、序盤に黒番が守勢(ディフェンス)にまわるのは仕方がないことである。

もし、黒番がセンターポーンを繰り出すと、陣形が整わないうちにセンターで駒の取り合いになり、ゲーム開始早々に疲弊する。

白番のセンターポーンにかち合うことなく、黒番がポーンを繰り出して陣を作る戦法がシシリアン・ディフェンスである。

先手白番のセンターポーンとぶつかり合わなくて済む。

センターポーンを上げる利点は、

  • 中央支配
  • ビショップの動線確保

である。

Chess.com実戦ノート

シシリアン・ディフェンスを敵ビショップに破壊されたゲーム